導入
登山は、身体を動かすことで精神をリフレッシュできる快適なアクティビティです。また、四季折々の美しい自然を眺められるのも醍醐味です。
しかし、この素晴らしい体験を可能にするためには、クライマー全員が、登山の基本マナーとエチケットを守る必要があります。
この記事では、登山における「行動のガイドライン(初心者向け)」を紹介すると共に、その注意点を説明します。
是非、参考にしてください。
登山道でのエチケット
登山道では、他の登山者や自然との共存を心がけることが重要です。
歩行時のマナー
- 速度の調整とペース配分
ペース配分は、個人(あるいはグループ)の体力や年齢によって違いますが、登り始めてから30分後に最初の休憩をとり、その後は60〜90分歩いて10分程度休むというのが基本です。
この時、靴紐やウェアなど装備の不具合を見直したり、コースの確認をするようにしましょう。また、喉が渇いていなくても水分補給は忘れずにしてください。
自分に無理のないペースでゆっくりと歩き、そのペースで無理なく進めるようだと感じたら、少し速度を上げ、再び歩行します。
登山を疲れずに楽しむコツは、なるべく一定のリズムで歩き続けることです。そのため、初心者の人もあまり休憩をとり過ぎずに同じペースで進みましょう。
- グループでの歩行
グループなど大人数での登山(パーティを組むという)では、リーダーが先頭、サブリーダーが最後尾という並びが基本です。
そして、リーダーのすぐ後ろには、一番経験の少ない人や体力に自信のない人が続きます。
このような順番にするのは、リーダーが歩行中でも初心者の様子をうかがいやすく、技術的なことを指導しやすいためです。
登山初心者の人が複数いる場合は、ローテーションで並び替え、リーダーのすぐ後ろの位置が平等になるよう配慮してください。
休憩時の配慮
- 休憩場所の選び方
強風が吹き荒れる見晴らしのよすぎる場所、落石がありそうな崖の下、足場が不安定で地面が崩れやすい所、立ち入り禁止区域などは、休憩をとるにはふさわしくありません。
また、他の登山者の通行を妨げるような狭い道も避けてください。
登山時の休憩は、水分補給や糖分補給(行動食)を中心に、できるだけペース配分を乱さない程度で心がけましょう。
- ゴミの管理
「山にゴミを捨てない」というのは、登山における最も基本的なマナーのひとつです。
車両用道路が整備されていない山の中では、定期的に清掃やゴミの回収を行うことができないため、ゴミ箱がありません。
そのため、自分の荷物から出たゴミは、全て自宅まで持ち帰えるようにしてください。
厚手で破れにくいものやジッパー付きの袋は、登山用のゴミ袋として最適です。
また、生ゴミは、防水性・消臭性のあるタイプを使えば便利。繰り返して使えるゴミ袋(ガーベッジバッグやトラッシュポーチ)などもおすすめです。
自然環境への配慮
登山を通じて自然に触れることは、山に登った人にのみ与えられる特権です。しかし、登山者には、同時に自然環境へ配慮した行動も求められます。
植物や動物への影響を最小限に
- 植生へのダメージ防止
どんなに道が歩きづらくても、登山道以外を歩くことはやめましょう。
整備された道路は、人間が歩きやすいためだけにあるのではなく、希少植物を守るためでもあるということを忘れないでください。
靴で地面が踏み固められれば、せっかくの花の芽吹きを邪魔してしまいます。
また、咲いている草花は決して持ち帰らないように。現地で鑑賞したり、写真を撮ったりして楽しむのがルールです。
珍しい植物を見つけると、SNSにアップしたくなる人がいると思いますが、それが盗掘につながる可能性もあります。写真をインターネット上にあげる場合は、位置情報を削除し、場所が特定できるような表現を避けるなどの注意が必要です。
- 野生動物との適切な距離感
山で野生動物に出くわした場合、不必要に近づいたり、餌などをあげるのはやめましょう。また、動物たちを威嚇するような軽率な行為もNGです。
万が一、野生動物に遭遇した時は、自分の身を守る目的も兼ねて鈴やホイッスルで音を出し、こちらの存在を動物たちに知らせるようにしてください。
登山者同士のコミュニケーション
登山中は、他の登山者とのコミュニケーションが非常に重要です。また、お互いに助け合い、情報を共有することも必要です。
挨拶と情報交換
- 挨拶の重要性
登山中は、他の人とすれ違う時に挨拶を交わすのがマナーです。
これは、 お互いに気持ちよく登山を楽しむためというのはもちろんですが、もう一つ目的があります。
万が一、山で事故にあった場合、遭難者の顔に見覚えがあるということが目撃証言になるからです。
具体的なあいさつの例としては、すれ違う時に「こんにちは」、追い越す時は「お先に失礼します」、道を譲ってもらったら「ありがとうございます」と言いましょう。
- 情報交換の効果
登山地図GPSアプリ「YAMAP」では、登山中の位置情報を家族や友人と共有できる「みまもり機能」が提供されています。
みまもり機能とは、登山中の位置情報をYAMAPのサーバーに送信することで、家族や友人などと位置情報を共有できるシステム。
電波の届かない山の中(オフラインエリア)でYAMAPのユーザーどうしがすれ違った時、お互いの位置情報を自動で交換できます。
その情報は、オンラインエリアにおいてサーバーに送信されるため、YAMAPを使う人が増えれば増えるほど、ITを活用した人命救助ネットワークとも呼べる安全網が形成されていくという仕組みです。
まとめ
登山は、個人的なチャレンジであると同時に、登山者全員が共有すべき素晴らしい体験。
そのため、登山における基本的マナーとエチケットを守ることは、自分自身だけではなく、他のクライマーに対する礼儀でもあります。また、それは自然への敬意を示すことにもなるのではないかと思います。
そのかけがえのない価値を守り、受け継ぐには、一人一人が責任感をもって行動する必要があります。
全ての皆さんが、快適で楽しく、そして何よりも安全な登山を叶えられるように、この記事が参考になれば嬉しいです。