登山中に遭遇する可能性のあるリスク
天候の不確実性とその影響
登山中の事故で特に見過ごせないのは、天候に関係して起こる事故です。
山には、天気の良い日に登るということが最大の原則。
ここでは、登山時にありがちな天気の特徴と気をつけるべきポイントを紹介します。
- 真夏でも寒い高山
通常、山では標高が100m高くなるごとに約0.6℃〜1.0℃ほど気温が下がると言われています。
そのため、高山は平地より肌寒く、真夏でも防寒着が欠かせません。10月には、いつ雪が降ってもおかしくない状況です。
気温が低いことで起こる主な症状は、体温が著しく下がる低体温症。
寒さで体の動きが鈍くなると、遭難事故も起こりやすくなります。
- 平地に比べて風が強い
山頂は周囲に風をさえぎるものがなく、吹きさらしの状態です。
一般的に、風速が1m/s大きくなると体感温度は1℃下がると言われ、標高が高い山ほど強風が吹きやすい傾向にあります。
汗などで体が濡れている場合は体感温度がさらに下がり、凍えるほどに感じるでしょう。登頂の際は、防寒装備を忘れずに持って行くようにしてください。
- 急な雷雨に見舞われやすい
登山当日は、なるべく早い時間に出発し、なるべく早く目的地に到着できるよう計画的に行動するのが重要です。
また、下山についても同様。
「山の天気は変わりやすい」と言われるように、登山中は日常的ににわか雨や夕立に合う可能性があります。
また、夏は台風や低気圧が近づいてくる時期なので特に注意が必要。天候が荒れ、落雷事故が起こりやすくなります。
山では悪天候になることを想定し、余裕を持って行動するようにしてください。
- あたり一面に雲海が広がる
山には、山ならではの喜びや感動に出会える瞬間がいくつもあります。
そのひとつが「雲海」です。
雲海とは、眼下に広がる雲が大海原のように見える現象。雲の先からひょっこり頭を出した山は、まるで海に浮かぶ小島のように眺められ、私たち登山者に素晴らしい景観を見せてくれるでしょう。
地形の危険性
ここでは、地形がもたらすリスクの中で、特に重要な「谷地形」と「尾根地形」について説明します。
谷地形 |
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尾根地形 |
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- 谷地形の危険性
谷地形は凹んだ地形なので、雨が降った時、水かさが増水する傾向があります。
また、歩行中、土や石などを巻き込んだ土石流や鉄砲水(山地の小流域などで発生する急激な出水や増水)に合う危険も高いです。
特に、雨で地盤がゆるんで起こる土砂崩れには気をつけましょう。雨天の場合、翌日~翌々日までの登頂は控えるようにしてください。
- 尾根地形の危険性
尾根地形で最も注意すべきは、足を滑らせて起こる滑落です。これまでに多くの山々で命を落とすほどの滑落事故が確認されています。
しかし、尾根地形にはメリットもあります。
道に迷った時、山地で一番高くなっている見晴らしのよい尾根(凸の部分)まで登れば、自分が今いる場所を把握することが可能。
このように遭難事故や迷子になった場合、地形図を読み取る知識が役立ちます。是非、参考にしてください。
登山中の安全対策
必要な装備と準備
平地と環境が大きく違う山では、適したウェアやアイテム選びが重要です。
レインウェア(上着) |
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防寒着(中間着) |
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ズボン |
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トレッキングシューズ |
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リュックサック |
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くつ下 |
(着替えも忘れずに用意する) |
手袋 |
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帽子 |
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ヘッドランプ |
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水筒 |
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地形図・登山地図 コンパス(磁石) |
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トレッキングポール |
(軽量で、コンパクトに収納できるもの) |
快適に登山を楽しむためには、日頃の体調管理が重要です。
ここでは、登山に必要な筋力や持久力をつけるためのトレーニングを紹介します。
★筋力トレーニング
自分の筋力にあった負荷・回数・頻度で行うことがポイント。
負荷が大き過ぎると筋肉を痛めてしまい、あまり軽過ぎると効果が期待できません。
スクワットをする場合は、膝を曲げる角度に気をつけながら、回数を設定して1セットずつしてください。慣れてきたら、同じ内容のトレーニングを2〜3セットします。
★持久力トレーニング
最も良い方法は坂道や階段を歩くことです。また、日頃からエレベーターやエスカレーターを使わないことも効果的。
スポーツセンターなどでランニングマシンを利用する場合は、自分の持久力を確かめながら、徐々にレベルを上げて行うといいでしょう。
緊急時の対策
山での遭難信号の発信や応答は、笛(ホイッスル)を使うのが一般的。夜間なら、ヘッドランプを使います。
1分間に6回(10秒に1回)の割合でホイッスルを鳴らす。(ヘッドランプのスイッチをON/OFFをしてもいいし、光源を手で覆ったりしてもいい)
そのあとで、1分間休む。これを繰り返し行なう。
応答信号
1分間に3回(20秒間に1回)の割合でホイッスルを鳴らし、1分間休む。これを繰り返し行なう。
健康管理とリスク回避
高山病の予防と対処
山では、標高が上がるとその分気圧が下がるため、大気中の酸素が減少します。その環境の変化に適応できず、体に異常が生じるのが高山病。
主な症状は、頭痛や食欲不信、吐き気やめまい&ふらつき、倦怠感や不眠です。
ここでは、高山病の予防法&対処法を説明します。
★ゆっくり登る
急に高度が上がると体が適応できず、高山病にかかってしまいます。
登山時は、休憩しながらゆっくり登るようにしてください。
また、前日と当日に就寝する地点の標高差に気を付ける必要もあります。
高度の高い山に登る場合は、中腹の山小屋などで1泊するプランを立てるといいでしょう。
★こまめな水分補給
人間の体は、血液が循環することで酸素が筋肉や脳などに運ばれます。
体内に水分が不足すると血液の流れが滞り、体の隅々まで酸素を送れません。
水分はこまめに補給するようにしてください。
★呼吸を意識する
高山病の予防には、深呼吸が有効です。
深くゆっくり息を吸い込み、ロウソクを吹き消すように息を吐く…という呼吸法を意識して行いましょう。
★昼寝を避ける
睡眠中は、自然と呼吸が浅くなり、体内に取り込める酸素の量が減少します。そのため、目覚めた時に頭痛や吐き気などを感じ、高山病を発症しているというケースがあります。
作業などで疲れて眠くても、なるべく昼寝は控えてください。
★血中酸素濃度をチェックする
血中酸素濃度(SpO2)は、パルスオキシメーターという機器で測定が可能。
ヘモグロビンが、どれくらいの比率で酸素と結びついているかを計ることができるので、高山病を判断する目安になります。
適切な休息と栄養摂取
登山中は、2 時間に 1 回行動食を摂ることが理想です。空腹を感じる前に栄養を補給することで、歩行中も疲れない体を維持できます。
糖質(炭水化物)をメインに、酸味・塩味・甘味など味のバリエーションを揃え、体調に合わせて選べるようにしておくといいでしょう。
しかし、ハードな登山活動では、交感神経が興奮状態になっています。体が疲弊し、気持ちも緊張しているため、食欲が出ない…という人もいるのではないでしょうか?
そのような方は、手軽にエネルギーが補えるチョコレートやコンデンスミルク、飴などでムリのない栄養補給を心掛けてください。
また、レモン味の食品や梅干しは、疲労回復に効果的なクエン酸を多く含み、汗で失われた塩分も補給できるため、おすすめです。
まとめ
この記事では、登山中に遭遇する可能性のあるリスクについて取り上げています。考えうる主なリスクは、天候の変化・地形の危険性・健康問題(高山病など)です。
登山では、健康管理とリスク回避が最大のポイント。
特に、歩行中に食べる行動食や適切な水分補給には気を付けましょう。
早期に疲労回復するための処置なども重要です。